新しいバイオ計測・イメージング法を開発するには、測定を行うセンサ基板の開発が重要です。 私たちの研究室では、微細な構造配列を持つ表面における光学現象に着目しています。 金は金色、銀は銀色というように、通常金属の表面には金属光沢が見られますが、光の波長(数百ナノメートル)以下の大きさの微細構造を持つ金属表面では、全く異なる“色”が現れます。 これは、金属の自由電子と光の電磁波との相互作用によって引き起こされる表面プラズモン共鳴によって、 定の波長の光が吸収されるために起こります。プラズモンによる光吸収は、色素のように退色が起こりません。 また、強い光吸収をナノメートルの極薄い膜で実現できるため、色材や印刷材料としても研究が進められています。
ナノメートルスケールで制御された金属ナノ構造配列を作製するには、 一般的に電子線リソグラフィーなどの大型の設備を必要としますが、 私たちは、誘電体ナノ粒子の自己集合構造を使って大面積に様々な光学特性を持つ金属ナノ構造配列の作製に成功しています。
私たちの研究室では、発色する金属ナノ構造表面を使って、スマートフォンなどのモバイル端末で、 疾病や健康状態に関係する生体分子を検出するバイオセンサ技術の開発を進めています。 これまで病院や専門の検査機関で行われてきた検査を、モバイル端末を使って自宅で行うための技術はモバイルヘルスとも呼ばれ、 コロナ禍で在宅医療の重要性が増している今、大きな注目を集めている分野です。 また、生活の中で使用できるバイオセンサ技術は、超スマート社会においてもフィジカル空間からの生体情報の取得に役立つと考えられます。